金属材料保全工学研究グループ

研究代表者:鎌田 康寛

目的

 各種産業・社会インフラ施設の老朽化が進んでおり、機器構造物の安全性を評価し、維持管理する技術の確立が求められている。本研究グループでは、金属材料保全工学研究センター(H13-22)で取り組んできた独自の診断技術の研究をさらに発展させるとともに、劣化・損傷診断技術に関係する学内研究者を集めた組織を作り、新しい保全技術の研究に取り組む。それら研究活動と並行して、関連教育・啓蒙活動にも取り組み、産業・インフラ施設を安全・安心に利用できる社会の実現を目指す。

構成員:10名(2014年4月現在)

マテリアル工学科

鎌田 康寛、菊池 弘昭、小林 悟

電気電子・情報システム工学科

安倍 正人、長田 洋、小林 宏一郎、永田 仁史、藤岡 豊太

機械システム工学科

脇 裕之

社会環境工学科

大西 弘志

研究概要

(1)金属材料劣化の非破壊診断技術の原理的研究 [鎌田・小林(悟)]

 現在、金属機器構造物の安全性評価で実施されている非破壊検査では、金属にできた“き裂”の寸法と形状の評価を行い、破壊力学に基づきその進展を予測して、安全性を担保している。しかし進展速度の速い脆性破壊など十分でない場合がある。き裂が発生・進展する過程や金属が変質し脆化する過程で、構造物内部では格子欠陥の形成やナノ・ミクロな金属組織変化が生じている。本グループが取り組む診断技術は、そのような格子欠陥の形成や金属組織変化に敏感な物理特性を計測して材料劣化の非破壊評価を行う技術で、従来型の検査とは概念が全く異なる新技術である。有力な物理特性として、磁性(特に1次元格子欠陥の転位に敏感)や、弾性・減衰特性、伝導性があげられ、それらに着目した診断技術の原理的研究を行っている。材料劣化には様々あるが、主に、①照射環境下、②高温環境下における劣化問題に取り組んでいる。それらの劣化は、原子力・火力発電プラント、鉄鋼等の高温プラントなどの機器構造物で問題となっており、それらの診断技術の確立は、各種プラントの安全・安心な運用に直結する。特に照射劣化のこの種の診断技術を総合的に研究しているグループは世界的に無く、国内外の様々な関連研究機関と協力しながら、研究の拠点づくりを進めている(写真1)。

 

(2)電磁計測技術に基づく非破壊診断技術の応用展開研究[菊池]

 電磁非破壊評価技術を実用化する上で重要な材料の劣化や欠陥と電磁気特性との相関に関する基礎的な研究を進めると同時に、実際に現場で高感度かつ精度良く電磁気特性を計測することを目的とした、それぞれの検査対象に適した評価装置の開発を行っている。(写真は、開発したプローブで鋼材の劣化分布を計測した例)

 

(3)超高感度磁気センサを利用した非破壊診断技術研究[小林(宏)]

 鉄筋コンクリート構造物である橋や建物、プラントの設備などの磁界や電界を用いた非破壊検査装置の開発を行っている。本研究では、以下の3つのシステムを開発して、研究している。

  1. 我々が開発した超高感度ワイドレンジ型SQUID磁束計を用いて、大きな磁界信号に埋もれている微弱信号を検出して、非破壊検査を実現する。
  2. 通常のコイルを用いた磁界印加法において、我々が提案した走査方法による(特許申請中)、鉄筋の位置を高精度で推定する。さらに、コンクリート内の導線と鉄筋の分離が可能である。(図1)
  3. 交流電気インピーダンス法において、我々が提案した計測方法による、コンクリート構造物の塩分濃度推定を行う。(図2)

以上の研究は、近年の社会のニーズの高い建築物や架橋、原子炉などの安全性の評価を目指している。また、岩手県においては、自動車の生産拠点として先端的な様々な技術が求められ、その中で車台の非破壊検査技術が期待されている。ndesrc3b

 

(4)音響解析技術を用いたコンクリート構造体の非破壊診断研究[安倍・永田・藤岡]

 地震・台風等の災害があった場合、例えばビル、ダム、トンネル等に劣化があれば、これを検出する必要がある。防波堤に用いられるケーソンの場合、欠陥(穴)は海中に生じるため、コストや安全性の点から計測は海面の上から行う必要がある。そこで、ケーソンの上に複数のセンサを設置し、ケーソン上部をインパルスハンマで打撃することにより減衰の少ない低周波数の音を生成する。欠陥があるとすれば欠陥からの反射波が観測されるので、それを計測することにより欠陥の有無と位置を計測することができる。図は計測の結果で、欠陥位置が明確に分かる。

 

(5)電磁超音波現象による非破壊検査法の開発研究[長田]

 磁気ひずみの逆効果により構造物内部の疲労度、応力状態が評価可能な非破壊検査法(図)を提案し、その開発研究を行っている。

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(6)遮熱コーティング膜の機械的特性評価法の開発研究[脇]

 ガスタービン発電や航空機エンジンのタービンブレードなど超高温材料の更なる高温化(高効率化に直結)、安全性確保、長寿命化のため、超高温共鳴超音波計測(図)による、セラミックス遮熱コーティングの材料力学的研究を主に行っている。ndesrc6b

 

(7) 振動モニタリングを基本としたインフラ構造物の非破壊診断技術の開発[大西]

 近年、インフラ構造物の劣化が深刻な問題として認識ndesrc7bされるようになってきている。その中でも道路網を形成するトンネルや橋りょうの劣化は地域の市民の生活に直接与える影響が大きいため,より適切に管理することが求められている。しかしながら,昨今の社会情勢の影響により,各自治体の財務状態は悪化しており、社会基盤の維持管理に割ける予算は非常に限定的であるため、既往の手法よりも経済的でありながら精度を確保できる診断技術の開発が求められている。その要求に対応できる技術の一つとして振動モニタリングを援用した診断技術の開発を行っている。振動モニタリングとは構造物に力を与えて振動させ、その振動の発生具合を基に構造物が健全であるのかどうかを診断するものである。現在では構造物の一部分を取り出して診断する技術(ローカルモニタリング技術)と全体的に診断を実施するための技術(グローバルモニタリング技術)の開発を並行して行っている。

研究実績

発表・外部資金(H24)

学術論文14件、口頭発表41件、資料・解説2件、著書1件

共同研究・受託研究など 13件

主な活動

平成25年度研究拠点形成・重点研究支援経費(25-27年度)

プロジェクト名:安全・安心な社会を実現するための先進非破壊診断技術の研究拠点形成

リンク

鎌田・小林研究室

菊池研究室

小林(宏)研究室

安倍・永田研究室

長田研究室

脇研究室