DDS研究グループ

研究代表者:芝 陽子

目的

Drug Delivery System (DDS)研究グループ(生体脂質調節研究グループから改称)は、DDSの研究を行うために作られたグループです。DDSとは薬剤を標的にだけ作用させる技術のことです。例えば抗がん剤など強い薬剤はがん細胞以外の細胞に作用すると強い副作用が起こるため、がん細胞だけに届ける必要があります。まだまだ技術的に困難なところがありますが、それでもDDS研究によって少しずつ抗がん剤の副作用が軽減されてきました。また従来薬剤を送り届けることが困難であった神経組織にもDDS研究によって薬剤を送り届けることが可能です。さらに薬剤だけでなくサプリメントを効率よく目的の組織へ届ける技術もDDSの一つです。DDS研究は薬剤を届けるのみならず、低いpH条件下で薬剤を活性化させるようにするなど、薬剤の副作用を抑制しつつ効果を最大限に発揮させる、そういった薬剤の制御機構を開発する研究分野です。DDSの研究には異分野との連携が欠かせませんが、本DDS研究グループは異分野連携を行うプラットフォームとして機能し、DDSの研究開発を行います。

構成員:4名(2019年1月現在)

芝 陽子、 芝崎 祐二、 小林 悟、 若林 篤光

研究概要

芝 陽子(生命コース,細胞内輸送研究室)

 近年、体内の細胞はタンパク質や核酸などを小胞で包み、エクソソームと呼ばれる細胞外小胞として分泌して、標的細胞に取り込ませ、がんの転移を促すなど、細胞間の情報伝達にエクソソームが重要であることがわかってきました。エクソソームが体内組織を標的化するメカニズムを持っているのであれば、DDSへと応用できます。しかしながら、エクソソームについては現在ほとんど何もわかっていません。芝グループではエクソソームの形成機構の研究を行っていますが、DDS研究グループではその知見を活かし,エクソソームを利用したDDSの開発を目指します。

http://lifesci.iwate-u.ac.jp/intercell/index.html

芝崎 裕二(化学コース, 高分子機能化学研究室)

 高分子化合物は、金属ナノ粒子や薬剤などを内包するカプセル剤として非常に有用であり、これまでに様々な高分子化合物の開発が行われてきました。その中でも特に高い信頼性を有する高分子に、ポリエチレングリコール(PEG)とポリペプチドからなるブロック共重合体が挙げられます。このポリマーキャリアは血中で長時間安定に存在可能で、薬剤を患部に届けると、それ自体は生体に影響を与えることなく排出されると言われています。しかしながら、このような両親媒性ブロック共重合体が生体内から完全に除去されるかどうか多くの懸念があがっております。私たちは、全水溶性高分子化合物を開発し、これが従来型の両親媒性高分子キャリアーと同等のキャリアー能力を示すとともに、薬剤放出後には非ミセル化し、排出がより容易になる新規なDDSシステムを開発しました。私たちの研究の興味は、ナノパーティクルの高分子キャリアーの開発、リピッドミセルの開発、抗酸化剤の開発などにも向いており、研究グループメンバーとの密接な連携を行い、最先端の研究を進めます。

http://www.chem.iwate-u.ac.jp/labo_web/org_polymer/index.html

小林 悟(マテリアルコース)

 薬剤を担持あるいは内包させた磁性粒子は、磁気誘導による標的型DDSへの応用に期待されています。しかし、粒子形態(サイズ、形状、構造、分散性等)や諸条件(磁場強度と分布、温度、粘性など)を考慮した磁気誘導のメカニズムとその定量性については詳しく理解されていません。小林グループでは、生体適合性が良いマグネタイト(Fe3O4)に着目し、種々の形態のFe3O4磁性ナノ粒子の合成、磁化測定による磁性粒子集合体としてのマクロ特性評価、中性子小角・広角散乱実験による原子レベルでのナノ粒子の磁気構造評価、マイクロマグネティック計算などを通して、磁気誘導DDSのための機構解明を目指しています。